こんにちは、響です。
ショパンの曲を弾いたり、聴いたりしていると、ふとこんなことを感じたことはありませんか?
「ショパンって、♭多くない?」
ノクターンやワルツ。
親しみのある曲を思い浮かべると、どこか柔らかく、なめらかな響きが多い。
そしてもう一つ。
見た目は難しそうなのに、不思議と弾きやすい。
この感覚、実は気のせいではありません。
そこには、調性の選ばれ方が関係しています。
今回は、ショパンの曲になぜ、♭系の調が多いのか?
その理由を、代表的な作品をもとにわかりやすく解説します。
ショパンはなぜ♭系の調を選んだのか
ショパンは、ピアノ曲を多数、作曲しています。
その中でも特に♭系の調(変ホ長調・変イ長調など)を多く使った作曲家として知られています。
そんな彼の代表的な作品をいくつか見てみます。
- ノクターン Op.9-2(変ホ長調)
- ノクターン Op.27-2(変ニ長調)
- ワルツ Op.64-1「子犬」(変ニ長調)
- ワルツ Op.69-1「別れのワルツ」(変イ長調)
- 前奏曲 Op.28-15「雨だれ」(変ニ長調)
- ポロネーズ Op.53「英雄」(変イ長調)
こうして並べてみると、確かにショパンには♭系の調が繰り返し現れることに気づきます。
もちろん、すべてがそうというわけではありません。
たとえば《別れの曲》(エチュード Op.10-3)はホ長調ですし、《幻想即興曲》は嬰ハ短調です。
それでも、ショパンの代表作を思い浮かべたとき、♭系の調が何度も登場するのは偶然とは言い切れません。
そこには、ショパンらしい調の選び方が表れているように見えます。
理由その1:手に馴染みやすいから
まずひとつ目は、手の感覚です。
黒鍵が多い調は、見た目こそ複雑ですが、弾いてみると、指が自然な形に収まりやすくなります。
指にはもともとゆるやかなカーブがあります。
白鍵だけの平らな並びより、黒鍵を含む配置の方が手は落ち着きやすくなります。
結果として、ポジションが定まりやすく、動きも滑らかになる。
「難しそうなのに、意外と弾きやすい」と感じるのは、このためです。
黒鍵が多い調が弾きやすい理由については、こちらでも触れています。
ショパンは作曲家であると同時に、優れたピアニストでもありました。
だからこそ、“指にどう収まるか”という感覚に、とても敏感だったと考えられます。
理由その2:響きがなめらかにつながりやすいから
次に、音の響きです。
♭系の調は、角が立ちにくく、音がなめらかにつながって聴こえることがあります。
丸く溶け合うような響き、と言ってもいいかもしれません。
そのため、フレーズをつないだときに音と音の間が自然につながりやすくなります。
流れるようなラインが生まれやすいのです。
ノクターンのように、ピアノで“歌う”ことが中心になる音楽では、この感覚はとても大きい。
ショパンの音楽に多い、あの柔らかな歌い回し。
それを支えている要素のひとつが、こうした調の響きなのかもしれません。
理由その3:ショパンの表現そのものに合っているから
そして最後は、音楽そのものの方向性です。
ショパンの音楽は、華やかさがあっても、ただ外へ向かって開くだけではありません。
むしろ、どこか内面へ沈み込み、細やかなニュアンスや呼吸を大切にする作品が多くあります。
大きな音よりも、余韻。
強い主張よりも、揺れやためらい。
そして何より、ピアノで“歌う”こと。
この感覚と、♭系の調のやわらかな響きはよくなじみます。
音が自然につながり、フレーズが途中で切れにくい。
ショパンが♭系の調を選んだ背景には、弾きやすさもあったはずです。
それだけでなく、ショパンの表現に合う響きとして自然に選ばれていたのかもしれません。
ここまでのショパンが♭系の調を多く使った理由をまとめてみます。
「弾きやすさ」「響きのなめらかさ」「表現との相性」
この3つに集約できるからこそ、ショパンには♭系の調の作品が多いのでしょう。
調性は、ただの高さの違いではない
ここまで見てくると、調性は単なる音の高さの違いではないことがわかってきます。
- 手にどう馴染むか
- 響きがどう重なるか
- どんな表情をつくりやすいか
そうしたものを含めて、調は選ばれているのです。
ショパンに♭系の調が多いのは、弾きやすさ・響き・表現のすべてにおいて合理的だった。
それが最大の理由といえるのではないでしょうか。
調性そのものについては、一覧でまとめています。
→ 調性一覧ページ
音で違いを体験してみる
こうした調の違いは、言葉だけで理解するのが難しい部分でもあります。
でも、実際に音で聴き比べてみると、「なんとなくの違い」が一気にはっきりしてきます。
明るい・暗いだけではない、響きの質や空気感の違い。
この感覚は、一度つかめると、曲の聴こえ方そのものを変えてくれます。
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