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ベートーヴェンはなぜ“ハ短調”を選んだのか?|運命と悲愴に共通する響き

こんにちは、響です。

ベートーヴェンの作品には、ある調性が繰り返し現れます。
それが、ハ短調(c-Moll / C minor)です。

《運命》や《悲愴》など、印象的な作品の多くがこの調で書かれています。
強い緊張や対立を感じさせるこの響きは、ベートーヴェンの音楽を語るうえで欠かせない要素のひとつです。

では、なぜこの調が選ばれているのでしょうか。
今回は、そこに少しだけ目を向けてみます。

ハ短調という調性

最初に、ハ短調について簡単に見ておきます。
ハ短調は、♭が3つ付く短調です。

落ち着いた響きというよりも、どこか張りつめた緊張を感じさせる調。
古典派の中では、日常的に使われる調ではありません。
モーツァルトでも限られた作品にしか現れない調であり、特別な場面で選ばれる傾向があります。

それだけに、この調が用いられるとき、音楽にははっきりとした意味が生まれます。
ドラマティックな音楽として用いられることが多い調といえるでしょう。

ハ短調とは? 重厚で劇的な響きの特徴・音階・有名曲をわかりやすく解説

ベートーヴェンとハ短調

ベートーヴェンはハ短調を、さまざまな作品の中で用いています。
ここでは、その一部を挙げてみます。

  • 交響曲第5番《運命》
  • ピアノソナタ第8番《悲愴》
  • ピアノ協奏曲第3番
  • 32の変奏曲

いずれも、冒頭から強い緊張を伴う作品です。
静かに始まっても、すでに何かが張りつめているような感覚があります。

ここでのハ短調は、単なる「暗さ」とは少し違います。
何かに向かっていく力を帯びた響きとして現れています。

ハ短調からハ長調へ

ベートーヴェンの作品には、ハ短調からハ長調へと移行していく流れが見られます。
交響曲第5番《運命》でも、この変化は作品全体を通して現れます。

それ以外にも、次のような作品で印象的に用いられています。

  • 交響曲第5番
  • ピアノ協奏曲第3番
  • 32の変奏曲

張りつめた緊張の中から、音楽が少しずつ開かれていく。
暗さから明るさへというよりも、閉じていたものが開いていくような感覚に近い。

この変化もまた、ハ短調が持つ性格と無関係ではありません。

同じハ短調でも、表情はひとつではない

ピアノソナタ第8番《悲愴》第1楽章は、強い緊張を伴う典型的なハ短調の響きを持っています。
けれど第3楽章になると、同じ調でありながら、印象は大きく変わる。
第1楽章では重厚な和音が響き、第3楽章では速いテンポと流れる音型。

音楽の進み方でも印象は変わる。
張りつめた空気の中で音を積み上げていくのに対して、軽やかに音が連なっていく。
流れの中で音楽が形を作っていくような響きになる。

同じ調で書かれていても、そこに現れる音楽の表情は少しずつ違ってくる。

ハ短調という視点から聴く

ここまで見てきたように、ハ短調は単に暗い調ではありません。

張りつめた緊張があり、そこから音楽が動き出していく。
ベートーヴェンの作品の中では、その性格がはっきりとした形で現れています。

ハ短調で始まり、やがて別の響きへと移っていく。
その流れを意識して聴いてみると、音楽の見え方は少し変わってきます。

同じ作品でも、どこに緊張があり、どこでそれがほどけていくのか。
そうした動きを追うことで、音楽の輪郭はよりはっきりと感じられるようになります。

ベートーヴェンの作品を、この調という視点から眺めてみる。
そうすると、同じ音楽が少し違って見えてくるかもしれません。

ハ短調についてもう少し詳しく知りたい方はこちら
ハ短調とは? 重厚で劇的な響きの特徴・音階・有名曲をわかりやすく解説